03 アルバムのインターバルは

外回りに使っている車を喫茶店の近くに停車し、
以前に取引き先の人と打ち合わせに入った喫茶店に。
お店はこれといったサービスや
オリジナルのメニューがある訳でも、
店員と馴染み成ったのでもない。
ここではそうする事にしている、
っという自然な運びからだった。
アメリカンコーヒーと何口かで食べられるパンを注文。
要領を得た流れでトレイが置かれ、
カウンター越しの店員と、
マンションの隣人、コンビンの店員、タクシーの運転手・・・
彼らの時のように会釈をする。
トレイを取り、客席に目を向けると壁際の真ん中のテーブルが空いているので、
カバンとトレイを置き、椅子に上着を掛けて座る。
健康に注意づけてくれる妻のおかげで、
控えめにミルクと砂糖をコーヒに。
パンを胃に放り込み、食事じゃないな、
っと自分と小さく笑った。
備え付けられた灰皿を手前に寄せ、
背広のポケットからライターと煙草を出して、
リズムから火を付ける。
煙を出しながら、奥に視線をやり、また戻す。
落ち着いた心境とは裏腹に雜に煙草を押しつける。
携帯電話に映る時間がそうさせた。
カバンの中に入った書類を取り出して、
午後に向けた確認。
難しい仕事ではない。
危険を犯す安易な気持ちを押し殺しさえいれば、
事は収まる類のものだ。
午前中の仕事ではクライアント側が思っていたよりも
良い成果であった事がクライアントの二人同士の会話に有り、
悪いニュースとして時間の短縮化が私に向けられた。
悪いニュースは以前会議で取上げられたが御座なりに、
事後報告が決められた。
クライアントのビルを出た後に携帯から会社に電話をし、
誰に向けられるでもない連絡である事は
同僚との会話がしっかりと現していた。
報告書での名残りだけが、我々の気持ちと似通っていた。
だが、決められずにいるが上で成立たってしまったルールである事が、
社員一人一人の中に休符が生まれ、他の事業にも明暗に影響が出ていた。
上司と若手の仲立という立場が現実的な言葉として私にはあった。
その時、一つの音がした。
「xxライダー!!」。
さっき奧に目をやった時にはすでに居た母親と子供の所だった。
それは私にはとても懐かしく、彼れらで無くともよかったから音に聞こえたかもしれない。
xxライダーだけじゃなく、子供の時にヒーローに魅了された少年の一人だった。
学校はもちろん、友だちの遊び場では彼らとして、そして団員として暮らしていた。
変身ベルトが欲しくて親に拝み倒し、
誕生日に買ってくれた時は嬉しさのあまりに、
パジョを着ていたでも外さずに寝た事をよく覚えてる。
ある時、学校に巻いたまま登校して、
その日は身体検査が予定だった事をすっかり忘れた挙句に、
着替えの時間には大騒ぎになり、こっぴどく先生に怒られた。
罰として一週間取上げられ、親にもおもちゃをしばらく買ってくれなかった。
夏休みに祖父母の家に行かなかった事を理由にして
日記を3行に端折り、自由課題で虫の標本作りをし毎日川原に行っていた事は、
今でも同窓会でのネタになる。
修学旅行の時にクラスメイトが病気で出席出来ない為に、
普段は悪戯ばかりしていた奴らがクラスでお金を出し合い、
当時はまだ高かった使い捨てカメラを買い友人が見れない景色を
撮ってあげる事を先生に頼んだ事は本当にいい思い出だ。
病室に現像された写真を持っていた時に、
ベットの上で嬉しそうにはしゃぐ姿と言葉は照れくさかったなぁ。
毎週発売さえるコミック雜誌をクラスで回し読みしていたが、
自分の番が来ると友だちとお菓子を買い込み持って行った。
ランドセルを降ろしたら、そこには「xxライダー」は現われた。
今では、視線の奧の子供の中しか居ない。
私は声に出したり、ポーズを決めない。
私の中にはいない。
そう思うと、不思議な顔になり店を出た。
ただ「ありがとう。」っとカウンター越しの店員に言って。