271 大村憲司 10回忌

彼の演奏するギターは、
空気の中に颯爽となって鳴っていて、
まさに風のようだ。
しかもその音は、
季節によって濃淡が変わって見える水墨画のように、
春夏秋冬に耳を傾けさせて違って聴かすことができる。
それは手に馴染んだギターというよりも、
むしろ足に馴染んでいるのかもしれない。
しっかりと欧米、日本の季節を尋ね歩き、
そしてお土産を忘れず運びだしてくれた足。
その足跡を今も忘れずに聴く事は、
わらしべ長者を語り継ぐことだろう。
春は軽妙に、
夏は快活に、
秋は移ろい行き、
冬は宵と共に戯れる、
そんな徒然草さえも彼の足は感じていたかもしれませんね。
風の又三郎のようにちょっと奇妙なのもあるかもしれないけど、
大丈夫、
草木に風がすぎ、穂が落ちて、土を肥やし、
また春に健やかにいるんだから。