266 カンバセイション・ピース 保坂和志

妙に本を読んでいる気分にも、
その場所に居る気分にもなる小説です。
ふっと出てくる言葉、
ふっと出てくる場所、
ふっと出てくる登場人物たち。
ぼくたちの生活は、
そんなに理路整然としているわけでも、
筋道を立てられた理由があるわけじゃなくて、
なにげなかったりのふっとしたものだと思う。
それが地続きとなって、
またひとつひとつが大事になってくるのだと思う。
特別で大きなことが起きたりはしないけど、
家の縁側からふっと入ってくる木漏れ日のように、
嬉しくてほっとすることが、
ほんとはみんな、
特別で大きなことだってことを知っている。
そして、
今日もあーだこーだと言いながらも、
笑っている。
笑い門には福が来る。
もしかしたら、
じぶんたちがあーだこーだ言いながらも、
笑っていて、
笑っていられる友や人、
場所や時間や趣味や言葉を持っていられること、
それが笑う門には福が来る、
ってことじゃないかなぁ。