244生物と無生物の間 著者福岡伸一

生物というとても捉え所がないものをとても丹念に、
そして情熱を書かれている。
それは着色された言葉ではなく、
無造作なのに粗野でない姿。
利便的ではないはずのひとつひとつの力が、
組織体となった時に不条理とさえ思える連携性を持つ。
それは心地よいほどの各々の信頼。
細胞の信頼というと不思議だ。
しかし、それだからこそ人が保ち続ける情熱がある。
たましいがゆれる姿、
何かに没頭してる頭脳、
鍛え抜かれた身体による活動。
それらは細胞が持つ信頼。
それは著者自身がアメリカでの研究を通して身につけた姿であり、
人が備えられることが意識。
科学というと意識の備えることができない場所のように思うが、
なにかと対峙するときにはそれはきちんとある。
科学、文学を断つことなく、
むしろ両者がより顕著にするためにある意識。
意識、つまりそれは言葉だろう。
言葉とはつまりは生物。
意識と言葉と生物の三つが円を描き、
その骨子となる信頼と情熱。
人はそれらを忘れては、忘れてはいられない。
今日は昨日の続きであり、
昨日とは違う今日である。
この文学と科学が具有する言葉を輝かしくする魔法のような本だ。