325 音楽堂 矢野顕子

矢野さんがそこに座って弾いてくれて、歌ってくれている。
もうその信頼感と緊張感と言ったらないです。
つまりは信頼感というものだと思う。
歌やピアノがすばらしいことはさることながら、
なんだろうこの存在感。
あったらいいなぁ、
あってほしいなぁ、
そしてこうありたいという人が希求する気持ちをすくい取ってくれている。
しかしそれは正しさから発露される二分的な傾斜からではなく、
それらの二分的なものに流されずに、
本来あるべきな当然な価値を依拠しているからこそ
奏でられる音楽家として、
そして、
それらを内包する人しての寛容力があってこそだろう。
僕らは小手先のテクニックに助けを預かる。
それらを支えるためにも受け止める、人ってやつがいるのだろう。
双方は許し合える仲間になりえるし、そういうものだろう。
このアルバムが示すように。