292 美しい星 著三島由紀夫

SF小説や宇宙を題材にしたものというのは、
なぜかとても運命論的で幸福観が映し出される。
なぜだろうか。
それは空を見た時に、
あまりにも遠いからこそ見える月や星のように、
近すぎるものよりも、
遠いからこそ見える視点があるのじゃないだろうか。
いつでも聞ける歌謡や演歌よりも、
異国の霊歌や民族音楽に惹かれるように。
そして宇宙のような、見えるようで見えないものというのは、
私たちの日常の素晴らしさも教えてくれる。
宇宙だからと自然を探したり、
宇宙だからと科学を求めたりする。
そのなんとも人間らしい態度が読む人を惹き付けるのだろう。
なぜならば川を泳ぐように、
人生は見えるようで見えない。
だからこそ探求して、
科学と自然を進歩させようとする。
川を泳ぐ人そのものは人生であり文学でもある。
見えないようで見える文学は、
月のようにいつまでも魅力的な近隣であろう。